27章
概要
マタイによる福音書28章
復活の朝(1-10) ルカ24:1-12 イエスの復活は、創世の前より定めた神の救いの計画の必然であり、信仰と教会の基礎である。 1節 さて、安息日が終って、週の初めの日の明け方に、マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、墓を見にきた。 埋葬が終わった後も墓に向かって座っていたマグダラのマリヤとほかのマリヤは、やっと安息日が終わったので、用意していた香料と香油をもって墓に急いだ。ルカ23:56に「そして帰って、香料と香油とを用意した。それからおきてに従って安息日を休んだ。」 とある。安息日には墓参も禁じられていた。1コリント15:5-8に復活したイエスを見た多くの人々が書かれているが、そこに女性の名はない。しかし復活のイエスに最初に出合う栄誉をになったのは、マグダラのマリヤとほかのマリヤだった。 2節 すると、大きな地震が起った。それは主の使が天から下って、そこにきてをわきへころがし、その上にすわったからである。 まず最初に天の御使いがイエスの復活を証言してる。イエスを埋葬した墓の穴を27:60で石で閉ざし、さらに27:66で封印したと記録されている。マルコ16:3に二人のマリヤは「だれが、わたしたちのために、墓の入口から石をころがしてくれるのでしょうか」と話していたという。その石は非常に大きく、女二人では動かせそうになかった。ところが、御使いはいとも簡単にその石をわきにころがし、その上にすわったため、大きな地震が起った。 3節 その姿はいなずまのように輝き、その衣は雪のように真白であった。 御使いは、主の栄光を反映している。黙示録1:13-16に、イエスの栄光の御姿が描写されている。 4節 見張りをしていた人たちは、恐ろしさの余り震えあがって、死人のようになった。 神に愛されたダニエルが御使いの姿を見て、意識を失って、うつぶせに地に倒れ(ダニエル10:5-9)、使徒ヨハネは、イエスの栄光の御姿を見て、その足もとに倒れて死者のようになった(黙示1:17)。聖徒でさえ恐ろしく倒れるほどだから、不信者である番兵はなおさらのことだった。 5節 この御使は女たちにむかって言った、「恐れることはない。あなたがたが十字架におかかりになったイエスを捜していることは、わたしにわかっているが、 死んだイエスの遺体に香料と香油を施すことを強く願う二人のマリヤは気丈に御使いの前に立っていた。その二人に御使は恐れるなと励まし、十字架にかかって死んだイエスの遺体を探していることを分かっていると言った。 6節 もうここにはおられない。かねて言われたとおりに、よみがえられたのである。さあ、イエスが納められていた場所をごらんなさい。 御使いは、かねてイエスが言っていたように復活したことを二人に告げ、それを確かめるためにイエスが埋葬された場所を見なさいと言った。御使いは、復活した体に墓は無用のものであるから、ここにはおられないと告げたのだった。 7節 そして、急いで行って、弟子たちにこう伝えなさい、『イエスは死人の中からよみがえられた。見よ、あなたがたより先にガリラヤへ行かれる。そこでお会いできるであろう』。あなたがたに、これだけ言っておく」。 御使いは、二人のマリヤに急いでしなければならない重要な使命を伝えた。その使命とは、イエスが復活され、26:32でイエス自身が言われたように先にガリラヤに行っているので、そこでイエスに会うように、弟子たちに伝えよということだった。「行かれる」は、原文では今行っておられる途中の意。ガリラヤは、イエスが最も多くみことばを語られて、最も多くみわざを行われたところだった。そこに行くことによって、弟子たちはイエスのみことばとみわざを思い出し、またよみがえられたイエスは、彼らをとおして、同じみわざを行うように彼らに権威を授けることになっていた(18-20節)。 すべての聖徒には心のガリラヤがある。イエスは聖書を通して語りかけている。したがって神の御言葉を学ぶそこがガリラヤであろうし、自分の部屋で祈るとき、神の独り子イエスの御名を通して神に語りかけるならそこがガリラヤであろう。悲しむとき、悩むとき、失望しているとき、自己から出て行って生きたイエスに会えるガリラヤに向かう必要がある。 8節 そこで女たちは恐れながらも大喜びで、急いで墓を立ち去り、弟子たちに知らせるために走って行った。 二人は御使いの姿を見たので、恐れがあったが、御使いのことばを聞いて、悲しみと恐れは消え去り、心は歓喜に満たされた。死んで三日後によみがえるというイエスの言葉は本当だったのだ。マルコ16:8では二人は恐ろしくて、だれにも話さなかったとあるが、ここでは大喜びで、イエスが約束通りによみがえったことを弟子たちに伝えるために走って行った。 9節 すると、イエスは彼らに出会って、「平安あれ」 [1] と言われたので、彼らは近寄りイエスのみ足をいだいて拝した。 御使いの次は、イエスご自身が復活の証しをされている。イエスがよみがえられたという御使いの喜びの言葉を弟子たちに伝えようと懸命に走っていた二人は、目の前に現れたイエスを見て、思わず「み足」を抱いて拝したのだった。イエスに期待する野望も希望も何もなく、ただイエスのそばにいたかった二人のイエスの「平安あれ」という優しい言葉に対する自然に出た行動だった。「み足をいだいて」は、目上の者に敬意を表すしぐさ(1列王4:27)であり、イエスこそ、死を滅ぼされたキリストとして礼拝を受けるにふさわしい王であった。 10節 そのとき、イエスは彼らに言われた、「恐れることはない。行って兄弟たちに、ガリラヤに行け、そこでわたしに会えるであろう、と告げなさい」。 イエスは「恐れることはない。」と二人を励まし、弟子たちのことを「兄弟たち」と呼び、ガリラヤに行くように告げよと御使いに託した言葉を自分でも繰り返している。 祭司長らの策謀(11-15) イエスの墓の番人と祭司長との間で、イエスの復活を打ち消すために策謀が取り決められたマタイによる福音書特有の記事 11節 女たちが行っている間に、番人のうちのある人々が都に帰って、いっさいの出来事を祭司長たちに話した。 番人たちはイエスのあっかつの出来事を見なかったがイエスのからだがなくなっていたという出来事を見た。 12節 祭司長たちは長老たちと集まって協議をこらし、兵卒たちにたくさんの金を与えて言った、 祭司長たちは、兵卒(番兵)たちに金を与え、嘘をつかせたのだった。 13節 「『弟子たちが夜中にきて、われわれの寝ている間に彼を盗んだ』と言え。 この嘘は、27:62-66に対応したものだった。彼らが用心していたことが起きてしまったというわけである。 14節 万一このことが総督の耳にはいっても、われわれが総督に説いて、あなたがたに迷惑が掛からないようにしよう」。 兵卒が服務中に寝ると死刑に処せられる(使徒12:19)。この策謀を提督が聞いて怒り兵卒の身が危険になった時はできるだけのことをするからと言い含めて、兵卒たちを策謀に加担させたのだった。 15節 そこで、彼らは金を受け取って、教えられたとおりにした。そしてこの話は、今日に至るまでユダヤ人の間にひろまっている。 イエスのからだが盗まれたという話は、「今日に至るまで」すなわち、この福音書が書かれたころまでもユダヤ人の間に消えないで流布していた。 大いなる約束(16-20) マルコ16:15-16 16節 さて、十一人の弟子たちはガリラヤに行って、イエスが彼らに行くように命じられた山に登った。 どの山だったのか不明だが、師弟の思い出に連なる場所であったろう。 17節 そして、イエスに会って拝した。しかし、疑う者もいた。 弟子たちは十字架の前のイエスを礼拝しなかったが、山において復活したイエスにあった時に礼拝している。見ても疑い信ずることができなかった人々がいた。それは十一人の弟子たちの中にいたのか、そこに居合わせたほかの人なのか。マルコ16:14によると十一人の弟子たちは、イエスが復活した話を聞いても信じなかったが、実際に見て信じている。また、ヨハネ24:24-29のトマスの場合は、他の弟子たちが復活のイエスにあった時、たまたまいなかったため信じなかったが、後で自分の目で確かめて信じたため「うたがいのトマス」と呼ばれるようになった。 18節 イエスは彼らに近づいてきて言われた、「わたしは、天においても地においても、いっさいの権威を授けられた。 復活は神の救いの計画の中で、イエスがまことに神の子キリストであることを明らかにし、万人の罪の贖い主となる事柄だった。そしてここにおいて父なる神から「いっさいの権威を授けられた」のだった。 19節 それゆえに、あなたがたは行って、すべての国民を弟子として、父と子と聖霊との名によって、彼らにバプテスマを施し、 弟子たちは「すべての国民」のために派遣された。もはやイスラエルの家の失われた羊(10:6)だけのためではない。 20節 あなたがたに命じておいたいっさいのことを守るように教えよ。見よ、わたしは世の終りまで、いつもあなたがたと共にいるのである」。 イエスの存在は永遠である。「イエス・キリストは、きのうも、きょうも、いつまでも変ることがない。」へブル13:8 (2020/01/07)
[1] ギリシャ語でχαίρετε これは「喜びなさい。」と訳すことができる。 文語訳聖書(大正訳) 「安かれ」 新改訳聖書(1970年版) 「おはよう」 新共同訳(1987年版) 「おはよう」 聖書協会共同訳(2009年版) 「おはよう」 Luther Bible(1545) 「Seid gegrüßet!」 (ようこそ) King James Version(KJV) 「All hail.」 (ようこそ)
マタイによる福音書略解
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