8章
10章
ヨハネの黙示録9章
七人の天使がラッパ(士気を上げる音)を吹く(8章6節-11章19節) 第五のラッパ:いなごが額に神の刻印がない人を5ヶ月苦しめる(1-12) 1節 第五の御使が、ラッパを吹き鳴らした。するとわたしは、一つの星が天から地に落ちて来るのを見た。この星に、底知れぬ所の穴を開くかぎが与えられた。 キリストが持っている七つの星が七人の御使いであるように、この「一つの星」とは20:1の天使を指す。その天から地に落ちた天使 [1] には「底知れぬ所」すなわち深淵、悪魔の本拠地の鍵が与えられたのである。悪魔はいなごや獣、竜やへびの姿で人間界に現れる(9:3,11,11:7,17:8,20:1,3)。底知れぬ所は長い穴のような形をしており、地上の出口には戸があって鍵がかかるようになっている。これはユダヤ人の黄泉(よみ)、ギリシャ人のタルタロス(2ペテロ2:4)と区別される。そこはサタンが千年間捕らえられているところでもある(20:2-3)。これは詩編33:7の「深い淵」、またはアモス9:3の「海の底」に相当する。 2節 そして、この底知れぬ所の穴が開かれた。すると、その穴から煙が大きな炉の煙のように立ちのぼり、その穴の煙で、太陽も空気も暗くなった。 「底知れぬ所の穴」の戸は、鍵によって開かれた。その穴から、ソドム、ゴモラの滅亡の時のような大きい煙が立ち上り(創世記19:28)そのあたりがうす暗くなった(ヨエル2:2,10)。 3節 その煙の中から、いなごが地上に出てきたが、地のさそりが持っているような力が、彼らに与えられた。 「いなご」の外観が7節以下に述べられているが、奇怪な悪魔的存在であって、世界の終末に出現するのである。それには「さそり」(1列王12:11,エゼキエル2:6)が持っている力が与えられる。 4節 彼らは、地の草やすべての青草、またすべての木をそこなってはならないが、額に神の印がない人たちには害を加えてもよいと、言い渡された。 このいなごはエジプト脱出の時(出エジプト10:15)とは異なり、「地の草やすべての青草、またすべての木」を食べることが許されなかった。しかし「額に神の印がない人たち」に害をくわえることはゆるされた。2テサロニケ1:6「あなたがたを悩ます者には患難をもって報い」るのである。 5節 彼らは、人間を殺すことはしないで、五か月のあいだ苦しめることだけが許された。彼らの与える苦痛は、人がさそりにさされる時のような苦痛であった。 さそりが刺すと、それによっていのちを取られることはないが、激しいもだえ苦しむ痛みが走る。いなごに人間を殺すことは許されないが、五ヶ月の間のみ苦しめることが許された。 6節 その時には、人々は死を求めても与えられず、死にたいと願っても、死は逃げて行くのである。 「死を求めても与えられず」ヨブ3:21,エレミヤ8:3,ルカ23:30のような無限時刻の状態。 7節 これらのいなごは、出陣の用意のととのえられた馬によく似ており、その頭には金の冠のようなものをつけ、その顔は人間の顔のようであり、 いなごの形が「馬」に似ていることはヨエル2:4による。ヨエル書ではイナゴの侵入が軍隊の侵入にたとえられてる。「金の冠」(4:4,14:14)は勝利者の冠である。「人間の顔」は知性があることを示している。 8節 また、そのかみの毛は女のかみのようであり、その歯はししの歯のようであった。 「歯はししの歯のようであった」はヨエル1:6による。 9節 また、鉄の胸当のような胸当をつけており、その羽の音は、馬に引かれて戦場に急ぐ多くの戦車の響きのようであった。 「戦車の響き」もヨエル2:5による。7節から9節の外観の描写によると、このいなごは非常におぞましい怪物である。 10節 その上、さそりのような尾と針とを持っている。その尾には、五か月のあいだ人間をそこなう力がある。 「尾と針」さそりの針は「死のとげ」である(1コリント15:55-56)。こうして五か月のあいだ人間を苦しめる力があった。 11節 彼らは、底知れぬ所の使を王にいただいており、その名をヘブル語でアバドンと言い、ギリシヤ語ではアポルオンと言う。 いなごの王は「底知れぬ所」(9:1,11:7,17:8,20:1,3)の使い、すなわち悪魔自身であって、その名をヘブル語でアバドン(破壊)と言い、ギリシヤ語ではアポルオン(破壊者)と言う。旧約聖書でこの語は黄泉と同意義に用いられている。 12節 第一のわざわいは、過ぎ去った。見よ、この後、なお二つのわざわいが来る。 いなごのわざわいを含め三つのわざわいがくるのだが、8:13で「わざわいだ」が三回繰り返されたことに対応する。 第六のラッパ:四人の天使が人間の三分の一を殺した。生き残った人間は相変わらず悪霊、金、銀、銅、石の偶像を拝んだ(13-21) 13節 第六の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、一つの声が、神のみまえにある金の祭壇の四つの角から出て、 第六のラッパによって始まる災害が最も恐ろしいものとなる。人間の三分の一が死ぬというのである。「祭壇の四つの角」は、祭壇の四隅の突き出ている所を指している(出エジプト27:1-2,30:1-3)。そこから声が出たのだが、ラッパが吹き鳴らされる前に、8:5で御使が、神の怒りを象徴する火を祭壇から香炉に移し、その香炉を地に投げつけている。 14節 ラッパを持っている第六の御使にこう呼びかけるのを、わたしは聞いた。「大ユウフラテ川のほとりにつながれている四人の御使を、解いてやれ」。 「大ユウフラテ川」とは、ユウフラテ川の大河のことで、ユウフラテ川は当時の世界の東端と考えられていた。この川はローマ人を常に脅かしていたパルチヤ人の国を代表する川であった。それはまた悪魔的勢力の根拠地であった。「四人の御使」とあるのは、7:1の風を引きとめる御使とは別の天使である。これらの天使は異教徒たる人間の三分の一を殺すために出てくるが、彼らはユウフラテ川のほとりにつながれていた「懲罰の天使」である(エノク66:1)。彼らは終末の時にキリストにつかわされて、悪人を処罰する天使である(マタイ13:40-42 [2] )。 15節 すると、その時、その日、その月、その年に備えておかれた四人の御使が、人間の三分の一を殺すために、解き放たれた。 「その時、その日、その月、その年」とは、神の御計画が一時間も違わずに、正確に確実に行われることを指している。 16節 騎兵隊の数は二億であった。わたしはその数を聞いた。 「二億」は無限の数を示す。原語は「一万の二万倍」である。申命記33:2の「ちよろず」、ダニエル7:10の「万々」などもその類である。「その数を聞いた」という確認の句は7:4の「印をおされた者の数を聞いた」と同じ。 17節 そして、まぼろしの中で、それらの馬とそれに乗っている者たちとを見ると、乗っている者たちは、火の色と青玉色と硫黄の色の胸当をつけていた。そして、それらの馬の頭はししの頭のようであって、その口から火と煙と硫黄とが、出ていた。 馬に乗っていた兵は、赤、青、黄の三色の胸当てをつけていた。馬の口からはこの三つの色に対応する火、煙、硫黄が噴き出ていた。 18節 この三つの災害、すなわち、彼らの口から出て来る火と煙と硫黄とによって、人間の三分の一は殺されてしまった。 火、煙、硫黄は三つの災害を象徴するものである。そして、これらの三つのものによって、人間の三分の一が滅ぼされたのである。 19節 馬の力はその口と尾とにある。その尾はへびに似ていて、それに頭があり、その頭で人に害を加えるのである。 馬の「尾」は蛇に似ていて、「頭があり」、その頭は人間に害を加える力があった。 20節 これらの災害で殺されずに残った人々は、自分の手で造ったものについて、悔い改めようとせず、また悪霊のたぐいや、金、銀、銅、石、木で造られ、見ることも聞くことも歩くこともできない偶像を礼拝して、やめようともしなかった。 これらの災害にもかかわらず、生き残った人々は、相変わらず偶像礼拝その他の悪をやめようともしなかった(16:9-10,21)。「偶像」(イザヤ2:8,20,17:8)。「悪霊のたぐい」(申命記32:17の「神でもない悪霊」、マルコ5:2の「けがれた霊」)。「金、銀、銅、石、木で造られ、見ることも聞くことも歩くこともできない偶像」ダニエル5:23の「見ることも、聞くことも、物を知ることもできない金、銀、青銅、鉄、木、石の神々」による。「歩くこともできない」は詩編115:7にも関連している。 21節 また、彼らは、その犯した殺人や、まじないや、不品行や、盗みを悔い改めようとしなかった。 「殺人や、まじないや、不品行や、盗み」まじないを除けば十誡が書かれている(出エジプト20:13-15,マルコ10:19)。「まじない」(18:23,21:8,22:15)は妖術、魔術の類で、それらは悪魔のわざであった(申命記18:10-12)。 (2019/12/24)
[1] イザヤ14:12-15 「黎明の子、明けの明星よ、 あなたは天から落ちてしまった。 もろもろの国を倒した者よ、 あなたは切られて地に倒れてしまった。 あなたはさきに心のうちに言った、 『わたしは天にのぼり、 わたしの王座を高く神の星の上におき、 北の果なる集会の山に座し、 雲のいただきにのぼり、 いと高き者のようになろう』。 しかしあなたは陰府に落され、 穴の奥底に入れられる。。」
[2] マタイ13:40-42 「だから、毒麦が集められて火で焼かれるように、世の終りにもそのとおりになるであろう。 人の子はその使たちをつかわし、つまずきとなるものと不法を行う者とを、ことごとく御国からとり集めて、 炉の火に投げ入れさせるであろう。そこでは泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。」
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