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ヨハネの黙示録18章

大淫婦の裁きとバビロンの滅亡(17章-18章)

バビロンの滅亡 (1-8)
1節 この後、わたしは、もうひとりの御使が、大いなる権威を持って、天から降りて来るのを見た。地は彼の栄光によって明るくされた。
  「もうひとりの御使」17:1,7の御使と区別するべきもの。「彼の栄光によって明るくされた」エゼキエル43:2。
2節 彼は力強い声で叫んで言った、「倒れた、大いなるバビロンは倒れた。そして、それは悪魔の住む所、あらゆる汚れた霊の巣くつ、また、あらゆる汚れた憎むべき鳥の巣くつとなった。
  「倒れた、大いなるバビロンは倒れた」14:8と同じ。倒れた後のバビロンは荒れ果てた地になることを旧約の表現で述べている(イザヤ13:21-22,34:14,エレミヤ50:39,51:37)。廃墟には種々の神話的または悪魔的な鳥獣が住みつくものと考えられていた(ゼパニヤ2:14-15)。
3節 すべての国民は、彼女の姦淫に対する激しい怒りのぶどう酒を飲み、地の王たちは彼女と姦淫を行い、地上の商人たちは、彼女の極度のぜいたくによって富を得たからである」。
   ローマ帝国滅亡の原因は、第一に皇帝礼拝の罪(「彼女の姦淫」)、第二にそれを配下の諸国にも強いた罪(「地の王たちは彼女と姦淫を行い」)、第三にローマの商業主義・豪奢な世俗的生活の罪(「彼女の極度のぜいたく」)による。
4節 わたしはまた、もうひとつの声が天から出るのを聞いた、「わたしの民よ。彼女から離れ去って、その罪にあずからないようにし、その災害に巻き込まれないようにせよ。
   この勧告はエレミヤ51:45 [1] によると言われている(イザヤ52:11,2コリント6:17)。
5節 彼女の罪は積り積って天に達しており、神はその不義の行いを覚えておられる。
  「彼女の罪は積り積って天に達しており」エレミヤ51:19による。
6節 彼女がしたとおりに彼女にし返し、そのしわざに応じて二倍に報復をし、彼女が混ぜて入れた杯の中に、その倍の量を、入れてやれ。
  「二倍に報復をし」というのは、イザヤ40:2,エレミヤ16:18にもあり、神の厳しい審判を示している。しかしこのような復讐的な思想は「目には目」というユダヤ教的思想を反映している。
7節 彼女が自ら高ぶり、ぜいたくをほしいままにしたので、それに対して、同じほどの苦しみと悲しみとを味わわせてやれ。彼女は心の中で『わたしは女王の位についている者であって、やもめではないのだから、悲しみを知らない』と言っている。
   高慢と浪費の罪は今も昔も変わらない。「わたしは女王の位についている者」はイザヤ47:7-9に基づいている。「やもめ」は孤児とともにもっともあわれな存在と考えられていた。
8節 それゆえ、さまざまの災害が、死と悲しみとききんとが、一日のうちに彼女を襲い、そして、彼女は火で焼かれてしまう。彼女をさばく主なる神は、力強いかたなのである。
  「さまざまの災害」、「死と悲しみとききん」は6:8の「つるぎと、ききんと、死」に相当する。「火で焼かれてしまう」17:16。7-8節の思想はイザヤ3:18-26,ルカ1:51などに共通している。
人々がバビロンの滅亡をなげく(9-19)
9節 彼女と姦淫を行い、ぜいたくをほしいままにしていた地の王たちは、彼女が焼かれる火の煙を見て、彼女のために胸を打って泣き悲しみ、
   この「地の王たち」は、ローマの皇帝礼拝に加わり、その世俗主義にならった人々をさす。
10節 彼女の苦しみに恐れをいだき、遠くに立って言うであろう、『ああ、わざわいだ、大いなる都、不落の都、バビロンは、わざわいだ。おまえに対するさばきは、一瞬にしてきた』。
   彼らはローマ滅亡に際し、その壊滅を嘆いたが、自らは「遠くに立って」(15)これをながめているだけである。「一瞬にして」の原意は「一時間の中に」で、しばらくの時の意である。
11節 また、地の商人たちも彼女のために泣き悲しむ。もはや、彼らの商品を買う者が、ひとりもないからである。
   大資本家たちは、彼らの商品が市場を失ったことを嘆く。
12節 その商品は、金、銀、宝石、真珠、麻布、紫布、絹、緋布、各種の香木、各種の象牙細工、高価な木材、銅、鉄、大理石などの器、
   12-13の商品は近代的な感覚に近い。多くはエゼキエル27:12-24にも見えている。「麻布」は18:16,19:8,14にもみえる。「絹」は中国産の商品であった。
13節 肉桂、香料、香、におい油、乳香、ぶどう酒、オリブ油、麦粉、麦、牛、羊、馬、車、奴隷、そして人身などである。
  「肉桂」も中国の産物と言われている。「香料」はインドまたはメデア辺の産物で、灌木から採取する。「香」は乳香の類である(5:8,8:3-4)。「車」はガリヤすなわち今のフランス地方の製品で、儀式用の四輪車である。「人身」は奴隷のように商品として取れ扱われていた人間のことをさしている。ローマでは、人間を円形競技場で猛獣と戦わせるため、また祭典における人身御供のため、人間を飼育していた。
14節 おまえの心の喜びであったくだものはなくなり、あらゆるはでな、はなやかな物はおまえから消え去った。それらのものはもはや見られない。
  「くだもの」は、ぶどう酒とともに高級な食品だった(エレミヤ40:10,12)。「はでな」物の原意は(美味な)膏で、「はなやかな物」とともに贅沢な品をさしている。
15節 これらの品々を売って、彼女から富を得た商人は、彼女の苦しみに恐れをいだいて遠くに立ち、泣き悲しんで言う、
  「遠くに立ち」(10,17)
16節 『ああ、わざわいだ、麻布と紫布と緋布をまとい、金や宝石や真珠で身を飾っていた大いなる都は、わざわいだ。
   17:4
17節 これほどの富が、一瞬にして無に帰してしまうとは』。また、すべての船長、航海者、水夫、すべて海で働いている人たちは、遠くに立ち、
  「海で働いている人たち」が嘆くことは、当時の海運界が盛んであったことを物語っている。
18節 彼女が焼かれる火の煙を見て、叫んで言う、『これほどの大いなる都は、どこにあろう』。
   エゼキエル27:32 [2] の「悲しみの歌」による。
19節 彼らは頭にちりをかぶり、泣き悲しんで叫ぶ、『ああ、わざわいだ、この大いなる都は、わざわいだ。そのおごりによって、海に舟を持つすべての人が富を得ていたのに、この都も一瞬にして無に帰してしまった』。
  「頭にちりをかぶり」エゼキエル27:30。彼らの悲しみの言葉はだいたいにおいて商人らの言葉と同じである(16,17)。

喜べ。バビロンが完全に滅びる(20-24)
20節 天よ、聖徒たちよ、使徒たちよ、預言者たちよ。この都について大いに喜べ。神は、あなたがたのために、この都をさばかれたのである」。
  「使徒たちよ、預言者たちよ」教会において、使徒と預言者とはもっとも重んぜられていた人々だった(1コリント12:28)。
21節 すると、ひとりの力強い御使が、大きなひきうすのような石を持ちあげ、それを海に投げ込んで言った、「大いなる都バビロンは、このように激しく打ち倒され、そして、全く姿を消してしまう。
   石を水に投げ入れて、滅亡の預言をすることは、エレミヤ51:63-64によったもの。
22節 また、おまえの中では、立琴をひく者、歌を歌う者、笛を吹く者、ラッパを吹き鳴らす者の楽の音は全く聞かれず、あらゆる仕事の職人たちも全く姿を消し、また、ひきうすの音も、全く聞かれない。
  「立琴をひく者」(エゼキエル26:23)、「笛を吹く者」(マタイ9:23)は、ユダヤ人の祭りなどに演奏を頼まれた人々(2サムエル6:5,イザヤ5:12,30:29)。「ひきうすの音」エレミヤ25:10。ひきうすは家内工業などを象徴する。それは平和の道具であり、平和時の職業を示している。
23節 また、おまえの中では、あかりもともされず、花婿、花嫁の声も聞かれない。というのは、おまえの商人たちは地上で勢力を張る者となり、すべての国民はおまえのまじないでだまされ、
  「花婿、花嫁の声」(エレミヤ7:34,16:9,25:10,33:11)も喜びの声であった。「あかり」も家の内部を照らすもので、ローマ時代は一つのぜいたく品だった。
24節 また、預言者や聖徒の血、さらに、地上で殺されたすべての者の血が、この都で流されたからである」。
   すべての殉教者の血の復讐がなされたのである(16:6,19:2,エレミヤ51:35,49,エゼキエル24:6)。

(2019/12/30)


[1]  エレミヤ51:45
 「わが民よ、あなたがたはその中から出て、
   おのおの主の激しい怒りを免れ、その命を救え。」

[2]  エゼキエル27:32
27:32彼らは悲しんで、あなたのために悲しみの歌をのべ、
  あなたを弔って言う、
  『だれかツロのように海の中で滅びたものがあるか。
27:33あなたの商品が海を越えてきた時、
  あなたは多くの民を飽かせ、
  あなたの多くの財宝と商品とをもって、
  地の王たちを富ませた。
27:34今あなたは海で破船し、深い水に沈み、
  あなたの商品と、あなたのすべての船員とは、
  あなたと共に沈んだ。
27:35海沿いの国々に住む者は皆あなたについて驚き、
  その王たちは大いに恐れてその顔を震わす。
27:36もろもろの民の中の商人らはあなたをあざける。
  あなたは恐るべき終りを遂げ、
  永遠にうせはてる』」。

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