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ヨハネの黙示録5章

神の玉座 天における礼拝と小羊の登場

七つの巻物の封印を子羊だけが解くことができる(1-5)
1節 わたしはまた、御座にいますかたの右の手に、巻物があるのを見た。その内側にも外側にも字が書いてあって、七つの封印で封じてあった。
  「御座にいますかた」神の語を避けて間接的な言い回し(4:2)。「巻物」パピルスの巻物で現在の書物に相当する。通常内側のなめらかな面に文字を書くが、内側(recto)に書ききれない場合は、外側(verso)にも書いた。「内側にも外側にも」字が書いてあるというのは、その巻物の内容が豊富であることを示す。それは神の宇宙支配のこと、特に人間の運命のことが書かれていた。しかしそれは一つの奥義または秘密であった(イザヤ29:11,ダニエル12:4,9)。
2節 また、ひとりの強い御使が、大声で、「その巻物を開き、封印をとくのにふさわしい者は、だれか」と呼ばわっているのを見た。
  「ひとりの強い御使」(10:1,18:21)が七つの封印を解くべき者を大声で探していた。
3節 しかし、天にも地にも地の下にも、この巻物を開いて、それを見ることのできる者は、ひとりもいなかった。
  「天にも地にも地の下にも」宇宙はこの三領域に分けられていた(出エジプト20:4,11,ピリピ2:10)。
4節 巻物を開いてそれを見るのにふさわしい者が見当らないので、わたしは激しく泣いていた。
   人間の中にはその運命を知っている者がひとりもいなかったので、ヨハネは人間のこの現状を見て悲しんだ。
5節 すると、長老のひとりがわたしに言った、「泣くな。見よ、ユダ族のしし、ダビデの若枝であるかたが、勝利を得たので、その巻物を開き七つの封印を解くことができる」。
  「ユダ族のしし、ダビデの若枝」メシヤすなわちキリストの称号。ユダ族のししは創世記49:9、ダビデの若枝はイザヤ11:1による。キリストはすでに復活して天上にあらわれる。ヨハネは復活のキリストを目の当たりに見る。

24人の長老の新しい歌(6-10)
6節 わたしはまた、御座と四つの生き物との間、長老たちの間に、ほふられたとみえる小羊が立っているのを見た。それに七つの角と七つの目とがあった。これらの目は、全世界につかわされた、神の七つの霊である。
  「ほふられたとみえる小羊」キリストは小羊の姿で顕現される。小羊としてのメシヤは、イザヤ53:7、エレミヤ11:19などに見えている。小羊たるキリストは十字架を経たかたであることを示している。「七つの角と七つの目」角は完全なる権能を指し、目は完全なる知力を指している。神としてのキリストの全知全能を表す。「これらの目は、全世界につかわされた、神の七つの霊」ゼカリヤ4:10の「これらの七つのもの(ともしび皿)は、あまねく全地を行き来する主の目である」による。7:5では七つのともしびを神の七つの霊としている。聖霊が人々につかわされることは、新約聖書の他の場所にも見出される(ルカ24:49,ヨハネ15:26,16:7,ガラテヤ4:6)
7節 小羊は進み出て、御座にいますかたの右の手から、巻物を受けとった。
   キリストは父なる神から巻物を受け取った。
8節 巻物を受けとった時、四つの生き物と二十四人の長老とは、おのおの、立琴と、香の満ちている金の鉢とを手に持って、小羊の前にひれ伏した。この香は聖徒の祈である。
  「立琴」(14:2,15:2)聖歌合唱の伴奏楽器。「香」も礼拝に必要なもので、「聖徒の祈」を象徴する(詩編141:2)。
9節 彼らは新しい歌を歌って言った、「あなたこそは、その巻物を受けとり、封印を解くにふさわしいかたであります。あなたはほふられ、その血によって、神のために、あらゆる部族、国語、民族、国民の中から人々をあがない、
  「新しい歌」(詩編33:3,40:3,96:1,98:1)とは、新しい恵みに対する賛美の歌で、キリストのあがないによって作り変えられる新しい世界の到来を祝う讃美歌(イザヤ42:10)。
10節 わたしたちの神のために、彼らを御国の民とし、祭司となさいました。彼らは地上を支配するに至るでしょう」。
  「御国の民とし、祭司となさいました」(1:6)神の王国において人は国民であり祭司である。「地上を支配する」(19:6,22:5)

御使たちと被造物の賛美の声(11-14)
11節 さらに見ていると、御座と生き物と長老たちとのまわりに、多くの御使たちの声が上がるのを聞いた。その数は万の幾万倍、千の幾千倍もあって、
  「聞いた」示現は見るものであるが、その中においては、声を聞き、におい(5:8)、味わい(10:9-11)、触れる(10:10)ことができる。「万の幾万倍、千の幾千倍」ダニエル7:10による。無数、無限数を表す。
12節 大声で叫んでいた、
   「ほふられた小羊こそは、
    力と、富と、知恵と、勢いと、ほまれと、栄光と、
    さんびとを受けるにふさわしい」。

   小羊の徳は七つに分けて列挙されている。1歴代29:11-12による。(歴代誌では知恵と賛美が欠けている。)
13節 またわたしは、天と地、地の下と海の中にあるすべての造られたもの、そして、それらの中にあるすべてのものの言う声を聞いた、
   「御座にいますかたと小羊とに、
    さんびと、ほまれと、栄光と、権力とが、
    世々限りなくあるように」。

  「そして、それらの中にあるすべてのもの」被造物全体が父なる神とキリストに対して賛美を捧げる。完成した天地の情景を表し救いの確かさを示す。
14節 四つの生き物はアァメンと唱え、長老たちはひれ伏して礼拝した。
  「アァメンと唱え」ダビデ王が神の契約の箱をエルサレムの幕屋に安置した時、アサフとその兄弟たちとを立てて、神に感謝の歌をささげたが、それが終わると「その時すべての民は「アァメン」と言って主をほめたたえた。」(1歴史16:36)。この時代から頌栄や祈りのあとにアァメンと唱和することがユダヤ教で始まった。その習慣がキリスト教にも取り入れられた(1コリント14:16)。

(2019/12/24)


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