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ヨハネの黙示録8章

子羊が七つの封印を解く

第七の封印:しばらく沈黙があり、祈りがささげられる(1-5)
1節 小羊が第七の封印を解いた時、半時間ばかり天に静けさがあった。
   第七の封印が解かれると、半時間ほどの「静けさ」があったが、それは次に来るべき、さらに恐ろしい災害を予感させるものであった。この「静けさ」は3節以下の説明で、香煙とともに地上から上ってくる聖徒の祈りが聞き分けられるためのものであった。
2節 それからわたしは、神のみまえに立っている七人の御使を見た。そして、七つのラッパが彼らに与えられた。
  「七人の御使」は神の側近の「大天使」であり、「み前の使」(イザヤ63:9)とも呼ばれる。エノク20:7に大天使の名前 [1] が示されている。ラッパの吹奏は終末の時 [2] に行われるものであるが、それはまた新しい時代の到来する信号でもある。ラッパの吹奏は天使の役割であった(マタイ24:31)。
3節 また、別の御使が出てきて、金の香炉を手に持って祭壇の前に立った。たくさんの香が彼に与えられていたが、これは、すべての聖徒の祈に加えて、御座の前の金の祭壇の上にささげるためのものであった。
  「別の御使」は大天使とは別の天使であるが、外典などに出てくる「平和の天使」(十二族長の遺言、ダン6:2)と呼ばれる仲保の天使であろうと言われている。この天使は地上の聖徒(殉教者)の祈りを神に伝えたのである。「金の香炉」は乳香(18:13)の香炉と思われる。しかし「たくさんの香」とあり一般的な香になっている。「聖徒の祈に加えて」とあるので、聖徒の祈りと香は別物のようであるが、5:8には「この香は聖徒の祈である」と説明されている(詩編141:2)。
4節 香の煙は、御使の手から、聖徒たちの祈と共に神のみまえに立ちのぼった。
  「香の煙」は聖徒たちの祈りを象徴する。
5節 御使はその香炉をとり、これに祭壇の火を満たして、地に投げつけた。すると、多くの雷鳴と、もろもろの声と、いなずまと、地震とが起った。
   天使は神にささげ終わった香の炉をふたたび手にとって、今度は神の怒りを象徴する火が祭壇から香炉に移され(レビ16:12)それを地上に投げたのである(エゼキエル10:2)。「雷鳴と、もろもろの声と、いなずま」は4:5によれば、天上の聖所からの出てくるものであるが、それらの他に地震が加わっている(11:19)。

七人の天使がラッパ(士気を上げる音)を吹く(8章6節-11章19節)
第一のラッパ:地上の三分の一、木々の三分の一、すべての青草が焼ける (6-7)
6節 そこで、七つのラッパを持っている七人の御使が、それを吹く用意をした。
   いよいよ七人の御使いがそれぞれのラッパを吹く準備にかかった。
7節 第一の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、血のまじった雹と火とがあらわれて、地上に降ってきた。そして、地の三分の一が焼け、木の三分の一が焼け、また、すべての青草も焼けてしまった。
   初めの四つのラッパの吹奏によって起こる地上の激変は、自然界の変動、地と海と川(水源)と天体の変動である。そこには「三分の一」(エゼキエル5:2,12,ゼカリヤ13:8-9などによる)の語が繰り返されている。それは終末時の災害も徹底的なものではなく、神のあわれみによって限度があることを示している。これは空間的な三分の一であるが、11章には四十二ヶ月、千二百六十日、三日半などの表現があり、三年半と言う、昔から使いならされている時間的制限を示している。「血のまじった雹と火」はヨエル2:30,エゼキエル38:22などによる。当時地中海にはサハラ砂漠の砂が混ざった赤い雨が降ったことがあった。

第二のラッパ:海の三分の一が血になり、海の生物の三分の一が死ぬ (8-9)
8節 第二の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、火の燃えさかっている大きな山のようなものが、海に投げ込まれた。そして、海の三分の一は血となり、
  「火の燃えさかっている大きな山のようなものが、海に投げ込まれた」紀元79年のヴェスヴィオ山の噴火などにも関係があると言われている。水が血になるというのは、出エジプト7:20(詩編78:44)では、ナイル川の水が血になったが、ここでは海の三分の一が血になる(16:3)。
9節 海の中の造られた生き物の三分の一は死に、舟の三分の一がこわされてしまった。
  「海の中の造られた生き物」(5:13,詩編104:25)。「舟の三分の一」舟とともにその乗組員も滅ぼされた。

第三のラッパ:にがよもぎという星が落ちて、川の三分の一が苦くなり、人が死ぬ (10-11)
10節 第三の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、たいまつのように燃えている大きな星が、空から落ちてきた。そしてそれは、川の三分の一とその水源との上に落ちた。
   星が天から落ちることは、イザヤ14:12,ダニエル8:10にもある。しかし星が川や水源に落ちるということは旧約聖書に見いだされない。
11節 この星の名は「苦よもぎ」と言い、水の三分の一が「苦よもぎ」のように苦くなった。水が苦くなったので、そのために多くの人が死んだ。
  「苦よもぎ」が人間を害することについては、エレミヤ9:15,23:15にある。苦よもぎ自体は毒ではないが、よく毒と言われている(申命記29:18,哀歌3:19,アモス5:7,6:12)。「苦くなった」の語はコロサイ3:19では「つらくあたる」と訳されている。

第四のラッパ:太陽、月、星の三分の一が暗くなる(12-13)
12節 第四の御使が、ラッパを吹き鳴らした。すると、太陽の三分の一と、月の三分の一と、星の三分の一とが打たれて、これらのものの三分の一は暗くなり、昼の三分の一は明るくなくなり、夜も同じようになった。
   日と月と星とがその三分の一を打たれたので、それらの輝く時間が三分の一減少し、昼も夜もさんぶは暗くなった。これも神罰が人を滅ぼすものではなく、救いの可能性を含むものであることを示す。
13節 また、わたしが見ていると、一羽のわしが中空を飛び、大きな声でこう言うのを聞いた、「ああ、わざわいだ、わざわいだ、地に住む人々は、わざわいだ。なお三人の御使がラッパを吹き鳴らそうとしている」。
  「わし」は翼の強いものであり(12:14)、またそれは来るべき審判の象徴である。「中空」正午に太陽のあるべきところ(14:6,19:17)。「地に住む人々」は地上の異教徒全体を指している(3:10,6:10,11:10,13:8,17:2)。「わざわいだ」18:10,16,19エゼキエル16:23。これまでの四つのラッパのわざわいよりも、さらにひどいわざわいが降りかかろうとしている。

(2019/12/24)


[1]  エノク書は初期のキリスト教の一部やエチオピア正教では『エノク書』は聖書の一部とされる。 他では偽典とされる
ユダの手紙1:14-15ではエノク書60:8と1:9を引用している。
七大天使の名前(以下)はエノク書にのみ現れる。
  ウリエル、ラファエル、ラグエル、ミカエル、サリエル、ガブリエル、レミュエル

[2]  イザヤ27:13
  ヨエル2:1
  マタイ24:31
  1コリント15:52
  1テサロニケ4:16

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