聖書学習の忘備録
1章
ヨハネの黙示録
1. はじめに
成立と著者
「ヨハネの黙示録」の著者は、聖書自身の自己証言による伝統的な理解によると「ヨハネによる福音書」、「ヨハネの手紙一・二・三」と同様に使徒ヨハネであると考えられている。
伝統的に、「黙示録」の成立はドミティアヌス帝時代の紀元96年周辺であると考えられてきたが、ネロ帝時代の69年頃と考える聖書学者もいる。前者の説の有力な根拠として、202年に死去したエイレナイオスの著書「異端反駁」5巻30における証言がある。エイレナイオスは著者ヨハネと会ったという人物から「黙示録」の執筆は「というのは、それが登場したのは余り前のことではなく、殆ど我々の時代、ドミティアヌスの治世の終わり頃のことである」という証言を直接聞いたと記している。さらに、「黙示録」に小アジアにおける迫害というテーマが含まれていることも96年成立説を支持している。ネロ帝のキリスト教徒迫害はローマ周辺に留まっていたが、ドミティアヌス帝時代には小アジアでも迫害が行われたので、遙かに辻褄が合う。
ヨハネの黙示録の目的
「黙示録」は、イエス・キリストの再臨、人間の体の復活、最後の審判、天国あるいは地獄への裁き、新天新地について、小アジア(現在のトルコ)にあるエペソ、スミルナ、ペルガモ、テアテラ、サルデス、ヒラデルヒヤ、ラオデキヤの七つの主要な教会にあてて書かれている。(黙示1:11)
「七」は完全な状態に使われる数字であるから、「七つの教会」は、すべての時代のすべての教会を指していると考えることができる。
「黙示」とはギリシャ語の「アポカリュプシス(古代ギリシア語:Ἀποκάλυψις)」の訳で、καλύπτω(覆う)に接頭辞のἀπό(離れて)が組み合わさったἀποκαλύπτω(明かす、明らかにする)という動詞に、-σιςという抽象名詞を作る接尾辞が付いた複合語である。つまり「黙示」とは、「覆いが除かれる」ということを意味し、イエス・キリストの「黙示」は、これまで明らかにされていなかったイエス・キリストの全容を前述の内容と共に一気に現わすことが目的となっている。
「わたしたちは、今は、鏡に映して見るようにおぼろげに見ている。しかしその時には、顔と顔とを合わせて、見るであろう。わたしの知るところは、今は一部分にすぎない。しかしその時には、わたしが完全に知られているように、完全に知るであろう。」1コリント13:12
ヨハネの黙示録の構成 1.パトモス島におけるヨハネに対するイエスの顕現(1章) 1.1.序詞(1:1-3) 1.2.七つの教会へのあいさつ(1:4-8) 1.3.ヨハネに啓示が示された顛末(1:9-20) 2.七つの教会への手紙(2章-3章) 2.1.エペソ教会: 偽りを退けたが、愛から離れた(2:1-7) 2.2.スミルナ教会: 貧しいが富んでいる。死に至るまで忠実であれ。(2:8-11) 2.3.ペルガモ教会: サタンの王座がある場所で忠実に証ししているが、ニコライ派の教えを悔い改めよ。(2:12-17) 2.4.テアテラ教会: 愛、奉仕、信仰、忍耐を知っているが、イゼベルという女の好き勝手にさせている。(2:18-29) 2.5.サルデス教会: 死んでいる。目を覚まして悔い改めよ。 (3:1-6) 2.6.ヒラデルフィヤ教会: 門を開く。みことばに従い、名を否まず、力があった。(3:7-13) 2.7.ラオデキヤ教会: 冷たいか熱くあれ。門の外に立ってたたく(3:14-22) 3.神の玉座 天における礼拝と小羊の登場(4章-5章) 3.1.神の御座に上れ(4:1-3) 3.2.聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな(4:4-11) 3.3.七つの巻物の封印を子羊だけが解くことができる(5:1-5) 3.4.24人の長老の新しい歌(5:6-10) 3.4.御使たちと被造物の賛美の声(5:11-14) 4.子羊が七つの封印を解く(6章-8章5節) 4.1.第一の封印:白い馬。勝利の上に更に勝利を得ようとして出て行く(6:1-2) 4.2.第二の封印:火のように赤い馬。戦争をもたらす(6:3-4) 4.3.第三の封印:黒い馬。飢饉をもたらす(6:5-6) 4.4.第四の封印:青ざめた馬。死をもたらす(6:7-8) 4.5.第五の封印:殉教者が血の報復を求める(6:9-11) 4.6.第六の封印:地震と天災(6:12-17) 4.6.1.神の刻印を押された十四万四千人のイスラエルの子ら(7:1-8) 4.6.2.大患難を通り、子羊の血で洗った白い衣を着た大群衆(7:9-17) 4.7.第七の封印:しばらく沈黙があり、祈りがささげられる(8:1-5) 5.七人の天使がラッパ(士気を上げる音)を吹く(8章6節-11章19節) 5.1.第一のラッパ:地上の三分の一、木々の三分の一、すべての青草が焼ける (8:6-7) 5.2.第二のラッパ:海の三分の一が血になり、海の生物の三分の一が死ぬ (8:8-9) 5.3.第三のラッパ:にがよもぎという星が落ちて、川の三分の一が苦くなり、人が死ぬ (8:10-11) 5.4.第四のラッパ:太陽、月、星の三分の一が暗くなる(8:12-13) 5.5.第五のラッパ:いなごが、額に神の刻印がない人を5ヶ月苦しめる(9:1-12) 5.6.第六のラッパ:四人の天使が人間の三分の一を殺した。生き残った人間は相変わらず悪霊、金、銀、銅、石の偶像を拝んだ(9:13-21) 5.6.1.天使に渡された小さな巻物を食べた。腹には苦いが、口には甘い(10:1-11) 5.6.2.二人の証人が殺されるが生き返る(11:1-14) 5.7.第七のラッパ:この世の国はわれらの主、メシアのものとなった。天の神殿が開かれ、契約の箱が見える。(11:15-19) 6.天の戦い、地における獣の増大、地の刈り入れ(12章-14章) 6.1.太陽を着て、月を踏み、12の星をかぶる女を見た。(12:1-6) 6.2.天で戦いが起こった。サタンが地に投げ落とされる(12:7-12) 6.3.赤い竜が神の民を迫害する(12:13-17) 6.4.獣が神の民と戦うために海の中から上ってくる。いのちの書に名が記されていないものはこれを拝む(13:1-10) 6.5.獣が地から上ってくる。獣の刻印を付ける (13:11-18) 6.6.エルサレムのシオンの山の子羊(14:1-5) 6.7.三人の天使が裁きを宣言する(14:6-13) 6.8.鎌が地に投げ入れられる(14:14-20) 7.最後の七つの災い 神の怒りが極みに達する(15章-16章) 7.1.七人の天使が神の怒りの満ちた七つの鉢を受け取る(15:1-8) 7.2.神の怒りを地にぶちまける(16:1) 7.2.1.第一の鉢:獣のしるしを付ける者、獣の像を拝む者に悪性のはれ物ができる(16:2) 7.2.2.第二の鉢:海が死人の血のようになって海の生物がみんな死ぬ(16:3) 7.2.3.第三の鉢:水が血に変わる(16:4-7) 7.2.4.第四の鉢:人間が太陽の火で焼かれる。それでも神を冒涜し、悔い改めない(16:8-9) 7.2.5.第五の鉢:獣の国が闇におおわれる。激しい苦痛(16:10-11) 7.2.6.第六の鉢:しるしを行う3匹の悪霊、ハルマゲドンに王を集める(16:12-16) 7.2.7.第七の鉢:大地震 島も山も消える(16:17-21) 8.大淫婦の裁きとバビロンの滅亡(17章-18章) 8.1.大淫婦が裁かれる(17:1-18) 8.2.バビロンの滅亡 (18:1-8) 8.3.人々がバビロンの滅亡をなげく(18:9-19) 8.4.喜べ。バビロンが完全に滅びる(18:20-24) 9.天における礼拝 子羊の婚礼(19章1-10節) 9.1.大群集が神を讃美する(19:1-6) 9.2.子羊の婚宴(19:7-10) 10.キリストの千年の統治の開始、サタンと人々の裁き(19章11節-20章) 10.1.この世の支配者たちの上に君臨される方 10.1.1.白い馬に乗った方の名は「誠実」「真実」、血に染まった服を着る「神のことば」、「王の王」「主の主」(19:11-16) 10.1.2.獣と偽預言者が火の池に投げ込まれる (19:17-21) 10.2.千年王国 10.2.1.サタンは底知れぬ所に封印されるが、その後しばらく自由の身となる (20:1-3) 10.2.2.殉教者と、獣の像を拝まず、獣の刻印を受けなかった者が復活して、千年間統治する。(20:4-6) 10.3.千年王国の後 10.3.1.サタンが一時的に解放されて神の民と戦うが、滅ぼされる(20:7-9) 10.3.2.サタンが獣や偽預言者もいる火と硫黄の池に投げ込まれて、永遠に苦しむ(20:10) 10.3.3.最後の裁き:いのちの書に名が無い者がすべて火の池に投げ込まれる。(20:11-15) 11.新天新地 11.1.新しい天と新しい地 最初の天と地は去った。(21:1) 11.2.神が人と共に住み、涙をぬぐわれる、死もなく、悲しみもない。そこにはいのちの書に名が書かれている者だけが入ることが出来る。(21:2-8) 11.3.新しいエルサレムの説明 (21:9-27) 11.4.神と子羊の玉座からいのちの水の川が流れる(22:1-5) 12.結び 12.1.イエス・キリストの再臨(22:6-17) 12.2.警告:この書物に(記述を)付け加える者には災害が加えられ、(記述を)取り除く者からはいのちの木と聖なる都から受ける分が取り上げられる。 (22:18-21) (2019/12/14) ヨハネの黙示録略解| 1章 | 2章 | 3章 | 4章 | 5章 | 6章 | 7章 | 8章 | 9章 | 10章 | 11章 | 12章 |
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