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ヨハネの黙示録2章

七つの教会への手紙

エペソ教会への手紙。 偽りを退けたが、愛から離れた。(1-7)
1節 エペソにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。『右の手に七つの星を持つ者、七つの金の燭台の間を歩く者が、次のように言われる。
   エペソの町はパトモス島にも近く、「エペソにある教会」は最も有力な教会だった。「歩く者」は七つの教会を調べて回り実情を知っていた。手紙の出だしの「次のように言われる」は、以下のすべての手紙に出てくる。
2節 わたしは、あなたのわざと労苦と忍耐とを知っている。また、あなたが、悪い者たちをゆるしておくことができず、使徒と自称してはいるが、その実、使徒でない者たちをためしてみて、にせ者であると見抜いたことも、知っている。
  「わざと労苦と忍耐」は福音の三大徳「信仰・希望・愛」(1コリント13:13)につながっている。ここの「悪い者たち」とは「使徒と自称して」いる者(2コリント11:13)、6節の「ニコライ宗の人々」を指す。
3節 あなたは忍耐をし続け、わたしの名のために忍びとおして、弱り果てることがなかった。
  「忍耐」の徳(ルカ8:15、へブル10:36)が称賛されている。
4節 しかし、あなたに対して責むべきことがある。あなたは初めの愛から離れてしまった。
  「初めの愛」(エレミヤ2:2)は5節の「初めのわざ」を行う愛の力を指す。その純真な愛が世俗的な力に圧倒されてしまった。エペソの教会の人々は、主のためにしっかり働き日の打ちどころのない正しい教会になっていたが、いつの間にか愛を忘れ心がかよわない教会になっていた。
5節 そこで、あなたはどこから落ちたかを思い起し、悔い改めて初めのわざを行いなさい。もし、そうしないで悔い改めなければ、わたしはあなたのところにきて、あなたの燭台をその場所から取りのけよう。
  「あなたの燭台」とはエペソの教会。「悔い改め」て「初めのわざ」を行わないと教会が取り去られるといっている。「初めのわざ」である福音宣教の働きを行い、奉仕する動機は、「キリストの愛(2コリント5:14)」に他ならない。パウロも「悔い改め」てキリストの愛にとどまるようにと祈っている。 [1] (エペソ3:17-19)
6節 しかし、こういうことはある、あなたはニコライ宗の人々のわざを憎んでおり、わたしもそれを憎んでいる。
  「ニコライ宗の人々」は「バラムの教を奉じている者」と同じ異端の一つで、バプテスマを受けた者は罪に陥ることはない主張して、性的放銃を何とも思わなかった。
7節 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい。勝利を得る者には、神のパラダイスにあるいのちの木の実を食べることをゆるそう』。
  「諸教会」とあるようにこれは、すべての教会に対する聖霊のメッセージである。「勝利を得る者」とは迫害に耐えイエスを神の御子と信じる者(1ヨハネ5:4-5)。 [2]  彼らは「神のパラダイスにあるいのちの木の実を食べる」ことがゆるされる。

スミルナ教会への手紙。 貧しいが富んでいる。死に至るまで忠実であれ。(8-11)
8節 スミルナにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。『初めであり、終りである者、死んだことはあるが生き返った者が、次のように言われる。
  「スミルナにある教会」この教会に対する手紙には叱責の言葉はない。スミルナはエペソの北方にあり、エペソと同じく海港都市であった。
9節 わたしは、あなたの苦難や、貧しさを知っている(しかし実際は、あなたは富んでいるのだ)。また、ユダヤ人と自称してはいるが、その実ユダヤ人でなくてサタンの会堂に属する者たちにそしられていることも、わたしは知っている。
  「あなたの苦難や、貧しさ」スミルナの教会の人々は貧しい人が多かったが、信仰的には富んでいた。「その実ユダヤ人でなく」とは「外見上のユダヤ人」(ローマ2:28)で、「サタンの会堂に属する者たち」が、スミルナの教会の人々を迫害していたのである。
10節 あなたの受けようとする苦しみを恐れてはならない。見よ、悪魔が、あなたがたのうちのある者をためすために、獄に入れようとしている。あなたがたは十日の間、苦難にあうであろう。死に至るまで忠実であれ。そうすれば、いのちの冠を与えよう。
  「受けようとする苦しみ」とは「獄に入れ」られる艱難。主は前節のユダヤ人を「悪魔」と呼んでいる。彼らは教会の人々をローマ政府に訴える者たちであった。「十日の間」実際の十日ではなく、しばらくの間を示す。(ダニエル1:14他にこの意味の十日が出ている。) 「いのちの冠」とは王冠のことではなく、当時のスミルナの競技場で優勝者に与えられる勝利の冠を暗示している。(1コリント9:25)
11節 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい。勝利を得る者は、第二の死によって滅ぼされることはない』。
  「第二の死」福音の光と真理に故意に背くことによって受ける霊の死。第一の死である肉体の死はすべての人が受けるが、第二の死は選びによって受ける。これもすべての教会に対する聖霊のメッセージである。

ペルガモ教会への手紙。 サタンの王座がある場所で忠実に証ししているが、ニコライ宗の教えを捨て悔い改めよ。(12-17)
12節 ペルガモにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。『鋭いもろ刃のつるぎを持っているかたが、次のように言われる。
  「ペルガモにある教会」に対してはエペソ教会と同様に称賛の言葉に次いで叱責の言葉が書かれている。ペルガモはスミルナの北方の海岸から少し東方の山地に入ったところにある異教の盛んな所で、紀元29年にはじめて皇帝礼拝の神殿が建てられ、女神ローマとアウグストゥス帝が祭られた。「鋭いもろ刃のつるぎ」は16節を予想している。
13節 わたしはあなたの住んでいる所を知っている。そこにはサタンの座がある。あなたは、わたしの名を堅く持ちつづけ、わたしの忠実な証人アンテパスがサタンの住んでいるあなたがたの所で殺された時でさえ、わたしに対する信仰を捨てなかった。
  「サタンの座」ペルガモにおける異教の聖所、アンテパスの殉教もその結果であった。
14節 しかし、あなたに対して責むべきことが、少しばかりある。あなたがたの中には、現にバラムの教を奉じている者がある。バラムは、バラクに教え込み、イスラエルの子らの前に、つまずきになるものを置かせて、偶像にささげたものを食べさせ、また不品行をさせたのである。
15節 同じように、あなたがたの中には、ニコライ宗の教を奉じている者もいる。
  「バラムの教」バラムはイスラエル人を誘惑し、モアブの神バアル・ペオルを拝せしめ、モアブやミデアンの婦女と姦淫を行わせ、イスラエル人の中に疫病が流行した。(民数25:6-18, 31:16) のちにバラムはモアブ王「バラク」にそれらの策を授けたという伝説が生まれた。バラムの教えはエルサレム会議で議決された条項(使徒15:29)を無視する異端であったが、15節の「ニコライ宗の教を奉じている者」は更に偶像にささげたものを人々に食べさせ、淫行にはしることを奨励したと言われている。エペソにある教会ではこの教えを拒んだが、ペルガモでは妥協してしまった。
16節 だから、悔い改めなさい。そうしないと、わたしはすぐにあなたのところに行き、わたしの口のつるぎをもって彼らと戦おう。
  「わたしの口のつるぎ」19:17参照。 ペルガモの人々が悔い改めないなら、これらバラムの教えを奉ずる人々やニコライ派の教えを奉じる人々は、イエスが再臨されるときに裁かれる。
17節 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい。勝利を得る者には、隠されているマナを与えよう。また、白い石を与えよう。この石の上には、これを受ける者のほかだれも知らない新しい名が書いてある』。
  「隠されているマナ」の表現はエレミヤがマナの入った金のつぼ(へブル9:4)をエルサレムの陥落(BC587)の直前にどこかに隠したという伝承による。またイエスは「わたしは命のパンである。」(ヨハネ6:35, 48)と言っているので、マナとはイエスを神の御子と信じる者に与えられる永遠の命であろう。 すなわち「神のパラダイスにあるいのちの木の実を食べる」や「第二の死によって滅ぼされることはない」と同義である。

テアテラ教会への手紙。 愛、奉仕、信仰、忍耐を知っているが、イゼベルという女の好き勝手にさせている。(18-29)
18節 テアテラにある教会の御使に、こう書きおくりなさい。『燃える炎のような目と光り輝くしんちゅうのような足とを持った神の子が、次のように言われる。
  「テアテラにある教会」7つの教会中もっとも微弱な教会と言われるが、この教会に対する手紙がもっとも長い。この町はペルガモからさらに40マイル東南の山地にあった。「燃える炎のような目と光り輝くしんちゅうのような足」ダニエル10:6にもとずく形容。
19節 わたしは、あなたのわざと、あなたの愛と信仰と奉仕と忍耐とを知っている。また、あなたの後のわざが、初めのよりもまさっていることを知っている。
  「わざと、あなたの愛と信仰と奉仕と忍耐」2:2の「わざと労苦と忍耐」をより詳細に述べている。「初めのよりもまさっている」は2:4の「初めの愛から離れてしまった」の正反対。
20節 しかし、あなたに対して責むべきことがある。あなたは、あのイゼベルという女を、そのなすがままにさせている。この女は女預言者と自称し、わたしの僕たちを教え、惑わして、不品行をさせ、偶像にささげたものを食べさせている。
  「イゼベル」フェニキヤ出の婦人でアハブ王の妃となり、イスラエルに異教の偶像礼拝を奨励した(2列王9:22)。テアテラ教会の中にもバラムの教えまたはニコライ宗に類するものがはびこり、教会の中堅の人々も誘われたようである。この運動の指導者は「女預言者」で、イゼベルという象徴的な名で呼ばれた。
21節 わたしは、この女に悔い改めるおりを与えたが、悔い改めてその不品行をやめようとはしない。
   イエス・キリストはどのような人にも悔い改める機会を与える。イスカリオテのユダにさえも。邪教の女預言者にもその機会を与えたが、悔い改めて不品行をやめるということはなかった。
22節 見よ、わたしはこの女を病の床に投げ入れる。この女と姦淫する者をも、悔い改めて彼女のわざから離れなければ、大きな患難の中に投げ入れる。
  「病の床」病床または艱難の床の意。棺または死を意味するとも言われている。「この女と姦淫する者」とはこの女の教えに従う者の意。
23節 また、この女の子供たちをも打ち殺そう。こうしてすべての教会は、わたしが人の心の奥底までも探り知る者であることを悟るであろう。そしてわたしは、あなたがたひとりびとりのわざに応じて報いよう。
  「この女の子供たち」これらもこの女の教えに従う者たちである。「人の心の奥底までも探り知る者」(詩編7:10,エレミヤ11:20,17:10,20:12)は神のこと。「わざに応じて報い」旧約(詩編28:4,62:12,エレミヤ17:10, 21:14)、新約(マタイ16:27,ローマ2:6)
   大患難の中に入る教会がさばかれるのを見て、全教会は、イエスが人の心の奥底までも探り知る方であることを知る。表向きは教会に通う人として振舞っても、その心が神から遠く離れているのであれば、その人はさばかれる。
24節 また、テアテラにいるほかの人たちで、まだあの女の教を受けておらず、サタンの、いわゆる「深み」を知らないあなたがたに言う。わたしは別にほかの重荷を、あなたがたに負わせることはしない。
   サタンの「深み」とは当時のノスティシズム(霊知数)の用語であって、それによれば霊が本体であり、肉は仮現であるから、肉食や淫行のような肉の行いは節制する必要がないと説いた。「別にほかの重荷を、あなたがたに負わせることはしない」とは使徒15:29に定められている「使徒的憲章」の四箇条の規定を課することはない。 すなわちテアテラにいる人たちの中で、女の教えを受け入れておらず、うサタンの深いところをまだ知っていない人たちにはほかの重荷を負わせないということ。
25節 ただ、わたしが来る時まで、自分の持っているものを堅く保っていなさい。
  「自分の持っているもの」受け継いで守っているイエスに従う信仰、真理、規定を固く保て。
26節 勝利を得る者、わたしのわざを最後まで持ち続ける者には、諸国民を支配する権威を授ける。
   詩篇2において、神の御子であるキリストが、諸国の民を鉄の杖で治められるところから来ている。
27節 彼は鉄のつえをもって、ちょうど土の器を砕くように、彼らを治めるであろう。それは、わたし自身が父から権威を受けて治めるのと同様である。
  「鉄のつえ」羊飼いが持つ木の杖の先に鉄の球がついていて、反抗する羊にそれをふるって服従させるもの。「治める」牧者が羊の世話をする意。福千年における神権統治。26節と27節は詩編2:8-9 [3] による。
28節 わたしはまた、彼に明けの明星を与える。
  「明けの明星」金星は、キリストのこと(22:16で「わたしは、ダビデの若枝また子孫であり、輝く明けの明星である」と言っている)。 キリストによる支配に聖徒が参加する。
29節 耳のある者は、御霊が諸教会に言うことを聞くがよい』。
   7節と同義。 すべての教会に対する聖霊のメッセージを聞きなさい。

(2019/12/24)


[1]  エペソ3:17-19
 「また、信仰によって、キリストがあなたがたの心のうちに住み、あなたがたが愛に根ざし愛を基として生活することにより、   すべての聖徒と共に、その広さ、長さ、高さ、深さを理解することができ、   また人知をはるかに越えたキリストの愛を知って、神に満ちているもののすべてをもって、あなたがたが満たされるように、と祈る。 」

[2]  1ヨハネ5:4-5
   「なぜなら、すべて神から生れた者は、世に勝つからである。そして、わたしたちの信仰こそ、世に勝たしめた勝利の力である。
    世に勝つ者はだれか。イエスを神の子と信じる者ではないか。 」

[3]  詩編2:8-9
   「わたしに求めよ、わたしはもろもろの国を
    嗣業としておまえに与え、
    地のはてまでもおまえの所有として与える。
    おまえは鉄のつえをもって彼らを打ち破り、
    陶工の作る器物のように彼らを
    打ち砕くであろう」と。」

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