21章
概要
ヨハネの黙示録22章
新天新地(21章-22章5節) 神と子羊の玉座からいのちの水の川が流れる(1-5) 1節 御使はまた、水晶のように輝いているいのちの水の川をわたしに見せてくれた。この川は、神と小羊との御座から出て、 「いのちの水の川」は、エレミヤ2:13,詩編36:9,箴言10:11などによる。その川の水はヨハネ7:38の聖霊の水を暗示する。 2節 都の大通りの中央を流れている。川の両側にはいのちの木があって、十二種の実を結び、その実は毎月みのり、その木の葉は諸国民をいやす。 その水は「十二種の実」を結ぶ「いのちの木」をうるおしている。その木の葉は人々をいやす薬となる(エゼキエル47:12)。この「いのちの木」はエデンの園のように一本ではなく、多数あったようである。エデンの園には「いのちの木」の他に「善悪を知る木」(創世記2:9)があって、アダム、エバは「善悪を知る木」の実を食べることができたが、「いのちの木」の実を食べることは許されなかった(創世記2:17)。「毎月みのり」はエゼキエル47:12の「月ごとに新しい実がなる」による。いわばここはエゼキエルの理想が再現されている。 3節 のろわるべきものは、もはや何ひとつない。神と小羊との御座は都の中にあり、その僕たちは彼を礼拝し、 「のろわるべきもの」(申命7:26)の言語は新約聖書中ここだけに用いられている。これはゼカリヤ14:11の「その中には人が住み、もはやのろいはなく、エルサレムは安らかに立つ」による。「神と小羊との御座」(21:22)の前で神を礼拝することは7:15の約束の成就である。 4節 御顔を仰ぎ見るのである。彼らの額には、御名がしるされている。 「御顔を仰ぎ見るのである」旧約においては、神の御顔を見ることは、命を失うことであったが(出エジプト33:20,23,イザヤ6:5)、今では人々は直接神を仰ぐことができる(マタイ5:8,詩編17:15)。 5節 夜は、もはやない。あかりも太陽の光も、いらない。主なる神が彼らを照し、そして、彼らは世々限りなく支配する。 「夜は、もはやない。あかりも太陽の光も、いらない」これは21:23,25の内容をまた繰り返し述べている。「主なる神が彼らを照し」民数6:25,詩編80:3,118:27,139:12,イザヤ60:19-20。「彼らは世々限りなく支配する」3:21,5:10。これをもってヨハネの黙示録の示現は終了する。 結び(6-21) イエス・キリストの再臨(6-17) 6節 彼はまた、わたしに言った、「これらの言葉は信ずべきであり、まことである。預言者たちのたましいの神なる主は、すぐにも起るべきことをその僕たちに示そうとして、御使をつかわされたのである。 「これらの言葉は信ずべきであり、まことである」21:5に出てくる語(19:9,11,1テモテ1:15)。「預言者たちのたましいの神なる主」預言者たちのたましいは、19:10のように、預言者そのものと解することができる。1コリント14:32には「預言者の霊は預言者に服従するもの」とある。「すぐにも起るべきことをその僕たちに示そうとして」1:1参照。6節は天使の言葉だが、7節はキリストの御言葉。 7節 見よ、わたしは、すぐに来る。この書の預言の言葉を守る者は、さいわいである」。 「見よ、わたしは、すぐに来る」(16:15,22:12,20)明らかにキリストの御言葉。「さいわいである」ヨハネの黙示録七福の第六の「さいわい」である。 8節 これらのことを見聞きした者は、このヨハネである。わたしが見聞きした時、それらのことを示してくれた御使の足もとにひれ伏して拝そうとすると、 「このヨハネである」1:1-3で述べたことを更に繰り返して、著者の名を明らかにしている。8節の後半と9節とは、19:10の繰り返しで、ヨハネはその示現の重大な意義のために、またも天使の前にひれ伏し拝そうとしたのである。 9節 彼は言った、「そのようなことをしてはいけない。わたしは、あなたや、あなたの兄弟である預言者たちや、この書の言葉を守る者たちと、同じ僕仲間である。ただ神だけを拝しなさい」。 19章では、「イエスのあかしびと」とあるが、ここでは「この書の言葉を守る者たち」という言葉に置き替えられている。また19:10に「イエスのあかしは、すなわち預言の霊である」という言葉があるため、ここには「預言者たち」と入れたと思われる。 10節 またわたしに言った、「この書の預言の言葉を封じてはならない。時が近づいているからである。 「この書の預言の言葉を封じてはならない」これは10:4およびダニエル8:26,12:4の命令と反対に、預言の内容をあからさまに人々に示すべきことを命ぜられている。 11節 不義な者はさらに不義を行い、汚れた者はさらに汚れたことを行い、義なる者はさらに義を行い、聖なる者はさらに聖なることを行うままにさせよ」。 ヨブ17:9,ダニエル12:10,エゼキエル3:27にも同様の内容があり、善人はますます善人に、悪人はますます悪人に進むという運命的な進展を述べている(マタイ13:12)。これは運命説というよりは、どこまでも人間の自由意志を強調するものである。 12節 「見よ、わたしはすぐに来る。報いを携えてきて、それぞれのしわざに応じて報いよう。 「それぞれのしわざに応じて」2:23,20:12-13。 13節 わたしはアルパであり、オメガである。最初の者であり、最後の者である。初めであり、終りである。 「わたしはアルパであり、オメガである」以下は1:8,17,2:8,2:16を総合して繰り返している。 14節 いのちの木にあずかる特権を与えられ、また門をとおって都にはいるために、自分の着物を洗う者たちは、さいわいである。 「自分の着物を洗う者たちは、さいわいである」ヨハネの黙示録七福の中の最後のものである。これは小羊の血で、自分の衣を洗って白くする者(7:14)と解せられる。 15節 犬ども、まじないをする者、姦淫を行う者、人殺し、偶像を拝む者、また、偽りを好みかつこれを行う者はみな、外に出されている。 「犬ども」犬は軽蔑されている動物だった(申命23:19,詩編22:17,マタイ7:6,ルカ7:27,ピリピ3:2)。これは21:8「忌むべき者」をさしている。「まじないをする者、姦淫を行う者、人殺し、偶像を拝む者」は皆21:8にある。「偽りを好みかつこれを行う者」21:27の「忌むべきこと及び偽りを行う者」に相当し、22:11の「汚れた者」とも解せられ、故意に悪を行う者の意である。 16節 わたしイエスは、使をつかわして、諸教会のために、これらのことをあなたがたにあかしした。わたしは、ダビデの若枝また子孫であり、輝く明けの明星である」。 「諸教会」直接にはアジアの七教会であるが、同時に全体の教会をさしている。キリストは「ダビデの若枝」(5:5,イザヤ11:1,10,ローマ1:3,15:12)、また「輝く明けの明星」(2:28,ヨブ3:9,イザヤ14:12,2ペテロ1:19)である。民数24:17にも「ヤコブから一つの星が出」とある。 17節 御霊も花嫁も共に言った、「きたりませ」。また、聞く者も「きたりませ」と言いなさい。かわいている者はここに来るがよい。いのちの水がほしい者は、価なしにそれを受けるがよい。 「きたりませ」これは12節の「わたしはすぐに来る」というキリストの言葉を受けた叫び声である。「かわいている者」以下は、イザヤ55:1に基づく21:6の句を繰り返して命令文として用いている(ゼカリヤ14:8,ヨハネ7:37)。 警告:この書物に(記述を)付け加える者には災害が加えられ、(記述を)取り除く者からはいのちの木と聖なる都から受ける分が取り上げられる。 (18-21) 18節 この書の預言の言葉を聞くすべての人々に対して、わたしは警告する。もしこれに書き加える者があれば、神はその人に、この書に書かれている災害を加えられる。 18、19節の警告は、黙示録が正典的意義を持つ文書であることを明言している(申命4:2,12:32,箴言30:6)。ここに「書き加え」と「とり除く」という積極、消極の両面から強調している。 19節 また、もしこの預言の書の言葉をとり除く者があれば、神はその人の受くべき分を、この書に書かれているいのちの木と聖なる都から、とり除かれる。 「受くべき分」は一部分の意であるが、ヨハネの黙示録では「受くべき報い」(21:8)、「あずかる」(20:6)と訳されている。 20節 これらのことをあかしするかたが仰せになる、「しかり、わたしはすぐに来る」。アァメン、主イエスよ、きたりませ。 「これらのことをあかしするかた」イエスご自身のこと。「わたしはすぐに来る」3:11,22:7にもあり、「時が近づいているからである」(1:3,22:10)というヨハネの黙示録の根本思想を示している。「主イエスよ、きたりませ」2テモテ4:8の「主の出現を心から待ち望んでいたすべての人」の叫びである。この語はアラム語のマラナ・タ(主よ、きたりませ)(1コリント16:22)の訳であって、原始キリスト教会において、アパ(父)とともに日常に用いられていたようである。ピリピ4:5の「主は近い」も一種のあいさつの語であったと言われている。 21節 主イエスの恵みが、一同の者と共にあるように。 「主イエスの恵みが、一同の者と共にあるように」最後の祝祷である。これは2コリント13:13のような完全な神論的祝祷ではないが、ローマ16:20と同種のもので、当時多く用いられた形式であったと思われる(1コリント16:23,ガラテヤ6:18)。 (2019/12/31)
ヨハネの黙示録略解
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