6章
8章
ヨハネの黙示録7章
子羊が七つの封印を解く 神の刻印を押された十四万四千人のイスラエルの子ら(1-8) 1節 この後、わたしは四人の御使が地の四すみに立っているのを見た。彼らは地の四方の風をひき止めて、地にも海にもすべての木にも、吹きつけないようにしていた。 「四人の御使」は風をつかさどる天使(14:18に火をつかさどる天使、16:5に水をつかさどる天使が出ている。)である。 「地の四方」(20:8)当時の世界は四角の平面(イザヤ11:12,エゼキエル7:2,マタイ24:31)で、四すみに風の源があると考えられていた(エゼキエル37:9,ダニエル7:2)。この風は単なる風や台風のようなものではなく、終末の時に吹き寄せる悪魔的な風であった(エレミヤ49:36,ダニエル7:2) [1] ので御使いたちが風を引き止めていた。「すべての木」風の害をまともに受けるのは樹木であった。 2節 また、もうひとりの御使が、生ける神の印を持って、日の出る方から上って来るのを見た。彼は地と海とをそこなう権威を授かっている四人の御使にむかって、大声で叫んで言った、 「生ける神の印」この印はエゼキエル9章にならって、人々の額に押すためのもので、印をおされたものは死滅を免れた。「日の出る方から」エゼキエル43:2,マラキ4:2,東はパラダイスのある所、神の祝福の出るところであった。東から来た天使は、世界の終末の変動のおこる以前にキリスト教徒の額に印をおして、彼らを災厄から救おうとする(エゼキエル9:4,6) [2] 。パウロも聖霊の証印を押されることを述べている(エペソ1:13,4:30)。 3節 「わたしたちの神の僕らの額に、わたしたちが印をおしてしまうまでは、地と海と木とをそこなってはならない」。 「木とをそこなってはならない」7:1,9:4 4節 わたしは印をおされた者の数を聞いたが、イスラエルの子らのすべての部族のうち、印をおされた者は十四万四千人であった。 この印を額におされた者の数は十四万四千人であって、イスラエルの12部族に各、一万二千人が割り当てられ、全体として完全な数を示す仕組みになっている。これはユダヤ民族だけについて言われているのではなく、新しいイスラエル、すなわち救われるべきキリスト教徒全体を指している。 5節 ユダの部族のうち、一万二千人が印をおされ、ルベンの部族のうち、一万二千人、ガドの部族のうち、一万二千人、 6節 アセルの部族のうち、一万二千人、ナフタリの部族のうち、一万二千人、マナセの部族のうち、一万二千人、 7節 シメオンの部族のうち、一万二千人、レビの部族のうち、一万二千人、イサカルの部族のうち、一万二千人、 8節 ゼブルンの部族のうち、一万二千人、ヨセフの部族のうち、一万二千人、ベニヤミンの部族のうち、一万二千人が印をおされた。 「ユダの部族」最年長のルベンではなくユダ族が最初に出ているのは、キリストがユダの部族の出身と言われているからである(5:5,へブル7:14)。イスラエルの十二族長は、ヤコブの十二人の子らであって、ふたりの正妻レア(ルベン、シメオン、レビ、ユダ、イサカル、ゼブルン)とラケル(ヨセフとベニヤミン、ヨセフの子にはマナセとエフライム)、またこのふたりの正妻の侍女ビルハ(ダンとナフタリ)、ジルバ(ガドとアセル)の四人の女から生まれた者である。ダンの名がないのはダンの部族から背教者が出るという考え(創世記49:17,士師記18)によるもので、エイレナイオスなども「反キリスト」はダンの部族から出ると考えていた。ダンの代わりにヨセフの子マナセがとり入れられている。民数記13:4-15ではレビが欠けており、代わりにヨセフの子エフライムが入り、民数記13:11には「ヨセフの部族すなわちマナセの部族」とあり、ヨセフの部族を重んずる傾向がある。 大患難を通り、子羊の血で洗った白い衣を着た大群衆(9-17) 9節 その後、わたしが見ていると、見よ、あらゆる国民、部族、民族、国語のうちから、数えきれないほどの大ぜいの群衆が、白い衣を身にまとい、しゅろの枝を手に持って、御座と小羊との前に立ち、 「あらゆる国民、部族、民族、国語」の者、ダニエル3:4,7,29,5:19,6:25。彼らは7:4の十四万四千人をさすものとみられている。これは「数えきれないほどの大ぜいの群衆」である。「白い衣」(4:4)を着た者は「その衣を小羊の血で洗い、それを白くした」者であって、殉教者を指している。当時すでにこのような数の殉教者を出していた。「しゅろの枝を手に持って」とは喜びや歓迎の心を表す動作で、キリストのエルサレム入城を迎える群衆(ヨハネ12:13)に見られる。 10節 大声で叫んで言った、 「救は、御座にいますわれらの神と 小羊からきたる」。 「救は・・・からきたる」は、詩編3:8の「救は主のものです。」に基づく訳し方 [3] をしているものもある。救いは「勝利」を意味しており、終末における神の最後の行為とも解される。 11節 御使たちはみな、御座と長老たちと四つの生き物とのまわりに立っていたが、御座の前にひれ伏し、神を拝して言った、 12節 「アァメン、さんび、栄光、知恵、感謝、 ほまれ、力、勢いが、世々限りなく、 われらの神にあるように、アァメン」。 ここでも5:12のように、神に七つの徳の言葉をささげて、賛美する。この七つの語は、原文では一語ずつ冠詞をつけられて、その一つ一つの意味が強調されている。5:12の「富」のかわりにここでは「感謝」になっている。また前後に「アァメン」が付け加えられている。 13節 長老たちのひとりが、わたしにむかって言った、「この白い衣を身にまとっている人々は、だれか。また、どこからきたのか」。 「長老たち」の質問はヨハネの質問を代弁している。 14節 わたしは彼に答えた、「わたしの主よ、それはあなたがご存じです」。すると、彼はわたしに言った、「彼らは大きな患難をとおってきた人たちであって、その衣を小羊の血で洗い、それを白くしたのである。 「わたしの主よ」は長者に向かって呼びかける言葉。「それはあなたがご存じです」は「そのことを知りたいと思っていますので、教えてください」の意。エゼキエル37:3に同じような問答がある。彼らの白い衣は純潔や無罪の象徴ではなく、栄光化した肉体を示すもので、単なる贖われたクリスチャンというものでもなく、完成された殉教者の姿である。自ら進んで小羊の血で自分たちの衣を洗って白くしたものである。 15節 それだから彼らは、神の御座の前におり、昼も夜もその聖所で神に仕えているのである。御座にいますかたは、彼らの上に幕屋を張って共に住まわれるであろう。 彼らは単に神と小羊の前にあって賛美の声をあげているというだけではなく、昼夜聖所において神に奉仕しているのである。神の御前の奉仕には祭司と俗人の区別はない。21:25,22:5には「そこには夜はない」とあるから、天の聖所には昼夜の区別はないだろう。神は「彼らの上に幕屋を張って共に住まわれる」のだがこの「幕屋を張る」は旧約聖書的表現で、新約聖書ではヨハネ文書だけに用いられている。それは神と人間との密接な交渉、特に神の保護の意味にも用いられている(イザヤ4:5-6の天蓋)。 16節 彼らは、もはや飢えることがなく、かわくこともない。太陽も炎暑も、彼らを侵すことはない。 16節、17節はイザヤ49:10からの引用 [4] と考えられる。「彼らは、もはや飢えることがなく、かわくこともない」(ヨハネ6:35,4:14)。「太陽も炎暑も、彼らを侵すことはない」(詩編121:6)。イザヤ書の「熱い風」は「炎暑」になっている。 17節 御座の正面にいます小羊は彼らの牧者となって、いのちの水の泉に導いて下さるであろう。また神は、彼らの目から涙をことごとくぬぐいとって下さるであろう」。 「彼らの牧者となって」イザヤ書にはないが、キリストが牧者であることは、詩編23:1,エゼキエル34:23にある。イザヤ書の「彼らをあわれむ者」は「御座の正面にいます小羊」とキリスト教化している。「いのちの水」(詩編36:8-9,エレミヤ2:13)。「涙をことごとくぬぐいとって」はイザヤ25:8の「主なる神はすべての顔から涙をぬぐい」による。 ヨハネの黙示録の最後の2章は、7:16-17を詳しく説明したものと言える。 (2019/12/24)
[1] エレミヤ49:36 「わたしは天の四方から、四方の風をエラムにこさせ、彼らを四方の風に散らす。エラムから追い出される者の行かない国はない。」 ダニエル7:2 「ダニエルは述べて言った、「わたしは夜の幻のうちに見た。見よ、天の四方からの風が大海をかきたてると、」
[2] エゼキエル9:4,6 「彼に言われた、「町の中、エルサレムの中をめぐり、その中で行われているすべての憎むべきことに対して嘆き悲しむ人々の額にしるしをつけよ」。・・・ 老若男女をことごとく殺せ。しかし身にしるしのある者には触れるな。まずわたしの聖所から始めよ」。そこで、彼らは宮の前にいた老人から始めた。」
[3] 黙示7:10 「救は御座に坐したまふ我らの神と羔羊(こひつじ)とにこそ在れ」(文語訳) 「救いは、御座にある私たちの神にあり、小羊にある。」(新改訳) 「救いは、玉座に座っておられるわたしたちの神と、小羊とのものである。」 (新共同訳)
[4] イザヤ49:10 「彼らは飢えることがなく、かわくこともない。 また熱い風も、太陽も彼らを撃つことはない。 彼らをあわれむ者が彼らを導き、 泉のほとりに彼らを導かれるからだ。
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