ルカによる福音書

1. はじめに

成立と著者
「ルカによる福音書」の成立は、70年から80年と言われるがはっきりしない。パウロが逮捕される前、ルカがパウロに同行してカイサリアに赴いた60年から63年とも考えられている。しかしローマにおいて獄中のパウロから聞き取って書いたという伝承に従うなら、さらに早まって40年から60年ごろに成立した可能性もある。

この福音書の著者は、パウロの協力者でその伝道旅行にも従った医師のルカであるとされてきた。
1) 詳細に調べあげ、事実を順序だてて書き記したと序文に書いおり、卓越した調査能力、大変美しく豊かな語彙のギリシァ語でまとめる力を持っていることから、ヘレニズム世界で高い正規教育を受けた者であろうと思われる。
2) ルカという名がパウロの手紙のコロサイ4:14、2テモテ4:11、ピレモン24に出ており、パウロとともに伝道していたことが伺われる。特にコロサイ4:14に「愛する医者ルカ」とあり、ルカが医者でありパウロと親しい間柄だったことが分かる。
3) パレスチナの地理には詳しくない。
4) 使徒行伝の冒頭に福音書と同じテオピオへの献辞が書かれている。使徒行伝に詳細なパウロの伝道旅行が含まれており、これの著者がルカと目されている。

ルカによる福音書の目的
直接に対象としているのは、冒頭の献辞にあるように使徒行伝と共通する非ユダヤ系のキリスト教徒と思われるテオピロになっている。この人は高い地位にあったと思われ、ルカはテオピオを通して広くギリシャ文化の中にある知識的な人々に、キリストの福音を伝えようとしたものと考えられる。 マタイが主にユダヤ人を読者の対象としたのに対し、ルカは異邦人であるテオピオを対象としていたが、それは、イエスキリストの救いは「イスラエルの栄光」であるとともに「異邦人を照らす世の光」であって、主はユダヤ人のみの主ではなく、世界の主であることを示そうとし、テオピオがイエスの行った事柄と教えが正確な事実であることを知り、正しい福音の知識をもとに確固とした信仰に入って欲しいという真摯な態度が冒頭の文章に表れている。
このように救いの対象が広がったことから、ユダヤ人が交わりをしなかったサマリヤ人のたとえ話(ルカ10:30-36)や病をいやされた後感謝のため戻ったサマリヤ人の話(ルカ17:11-19)や、貧しい人々への関心、女性に対する尊重や子供への心遣い、罪人との交わりを記している。

ルカによる福音書の構成
以下の5つの部分で構成される。
1) ヨハネの誕生、イエスの誕生と少年時代(1:1-2:52)
2) ヨハネの活動、イエスの荒野での誘惑(3:1-4:13)
3) ガリラヤでの伝道(4:14-9:50)
4) エルサレムへの道(9:51-19:27)
5) エルサレムでの最後の週、死と復活(19:28-24:53)

(2019/01/19)

ルカによる福音書注解(編集中)
ルカによる福音書1
ルカによる福音書2
ルカによる福音書3
ルカによる福音書22