1.　はじめに

成立と著者
「ペテロの第一の手紙」の1章1節に「イエス・キリストの使徒ペテロから」とあり、AD64年-65年にペテロによって書かれたと考えられる。
しかし、洗練されたギリシア語がペトロその人と結びつかないことと、生前のイエスを知っていることを示す記述が一切ないため、本書簡の著者がシモン・ペトロ本人とは思われないという意見が多い。
また、旧約聖書からの引用が35箇所あるが、すべて「七十人訳聖書」（ギリシア語旧約聖書）からの引用である。実際のペトロは「七十人訳聖書」には親しんでいなかったと考えられている。
5章12節に「わたしは、忠実な兄弟として信頼しているシルワノの手によって、この短い手紙をあなたがたにおくり、」とあり、「シルワノ」なる人物が著者ではないかという説もある。
5章13節に「あなたがたと共に選ばれてバビロンにある教会、」とあるが、当時のキリスト教徒の間では、「ヨハネの黙示録」の記述から「バビロン」といえばローマのことであった。このことから考えると、本書簡の成立時期は明らかに黙示録よりあと（90年～96年）ではないかと考えられる。そうだとするとペテロの殉教から30年以上経っていることになる。

ペテロの第一の手紙の目的
本書は「ポント、ガラテヤ、カパドキヤ、アジヤおよびビテニヤに離散し寄留している人たち」へとなっているが、内容的には異邦人に向けられている。

ペテロの第一の手紙の構成
1)　1:2-2:10　迫害に耐えること
2)　2:11-3:13　聖なる生活を送ること
3)　3:14-4:19　キリストにならって忍耐と聖性を示すこと
4)　5章　指導者たちへの助言

(2019/11/24)

ペテロの第一の手紙注解
ペテロの第一の手紙　1章(2020/08/24)
ペテロの第一の手紙　2章(2020/09/06)
ペテロの第一の手紙　3章(2020/09/28)
ペテロの第一の手紙　4章(2020/10/11)
ペテロの第一の手紙　5章(2020/10/14)